[PR]当たる!無料占いで仕事鑑定:大人気!無料占い『スピリチュアルの館』
総
天
然
色
図
書
館
読書は大切だ、と子供の頃から言われ続けて
きました。でも全然読みませんでした。大人
になってやっと少し読むようになりました。
本は、学校や親が教えてくれないような、
人が人として生きていく上で必要なことを
色々と教えてくれます。明確に、こうだ、
とは書いていなくても、行間から滲み*出る
ものを真摯*に吸い取れば良いのです。
という訳で、私が今まで読んだ本の中で特に
印象に残ったものの感想&無責任解説です。
もしまだ、ここに記した本を読んでいない
という方が「読んでみようかな?」という
気になって下さったのなら、私としても
わざわざ蛇文(蛇足*の文だから蛇文。駄文
ではない)を連ねた甲斐があったと
嬉しく思います。
基本的に上の方が最近読んだ本です。
作品名、作者名、蛇足解説の順です。
(敬称略)
☆三者三葉ノベル葉子様の夏休み
四コマ漫画『三者三葉』のノベライズです。
主役は、元お金持ちのお嬢様だけど、現在は貧乏の葉子様。
双葉、照などのメンバーとドタバタするのですが……
素直、とは言い切れない葉子様ですが、お友達がいる。
いいですね。
夏休みの旅行で、葉子様は過去からの素敵なメッセージと
対面します。ストーリーはシンプルですが、かなり感動。
原作マンガを読んでいない人でも楽しめます。
登場人物がほぼ全員、なにげに腹黒いのですが。
ぜひ原作マンガも読んでみてください。
三者三葉ノベル葉子様の夏休み
☆渋江抽斎
明治の大文豪森鴎外の「史伝」です。
渋江抽斎というのは、弘前の藩医で、考証学者だった人物。
軍医にして文筆家の鴎外にとっては敬愛すべき人物でした。
もし、読者と鴎外と抽斎の三者がコンタンポラン(同時代人)
であったなら、弘前の横町の溝板の上で、三者の袖は摩れ合って
いたことでしょう。
渋江抽斎という魅力的な人物を鮮やかな筆致で描き出し
鴎外の代表作の一つとなった作品です。
抽斎の四番目の妻である五百(いお)がとてつもない女傑です。
彼女のきっぷのいい活躍っぷりを見るだけで、愉快痛快です。
渋江抽斎
☆風の歌を聴け
ノーベル文学賞作家(たぶんそのうち)村上春樹氏のデビュー作。
アメリカ小説的な、雰囲気で読ませる小説。
本は薄いし、割と短いエピソードの連続なので読み易いです。
全体を通してどこか気怠いけど、やっぱ青春。
Tシャツのイラストが、なんか時代を感じさせます。
時代は感じるけど、古くさくは感じない村上作品。
特に、主人公の僕が彼女に一つだけ嘘をつくシーンが白眉。
どれが嘘だ?と目を凝らして探してしまいました。
もう一人、探すべきは随所に出てくる作家ハートフィールド。
私は探しませんので、誰かハートフィールドを探してください。
風の歌を聴け
☆マテリアルゴースト
主人公の口癖は「死にてぇ」です。
ヒロインは美少女です。でも幽霊だったりします。
人間というのは実体のある幽霊、
あるいは魂の抜け殻では?という疑問が提示されます。
でも生きている限り、世界は綺麗で……
食費が無く腹が減れば、死にたくなくなります。
見どころは主人公や巫女娘を追い込む真儀瑠紗鳥。
韻を踏むわけじゃないけど美人で理不尽。
「漢」で、かっこいい先輩です。しかも部長。
長い黒髪に不敵な笑み、ネクタイやシャツの裾など、
ちょっと着崩した感じの制服に、
ガーターベルトで吊ったオーバーニーソックス。
端麗な容姿と性格のギャップは独特な世界です。




☆ガレー船徒刑囚の回想 ジャン・マルテーユ
岩波文庫の青です。つまりフィクションではありません。
いやぁ、懐かしいですね、ガレー船。
例えば、宿屋で騙されて眠り薬入り酒を飲んで、
気付いてみたら鎖に繋がれガレー船を漕がされていた…
そんな苦い経験、誰しもお持ちなのでは?
漠然とした苦難の思い出、悪名高いガレー船の実態を
生々しく語っている本です。
ガレー船は冬期間は港で引きこもりとなるのですが、
だからといって我々漕ぎ手たちに休みはありません。
せっせこ靴下編みなどの労働をやらされます。
ガレー船に送られる過程で徒刑囚がぶち込まれる
土牢の恐ろしさ、凄まじさも迫真の描写です。
ガレー船徒刑囚の回想 岩波文庫
☆雪風ハ沈マズ 豊田穣
駆逐艦雪風を描いた戦記ノンフィクションです。
数々の激戦を経ながらも巧みな操艦と強運で
開戦〜終戦まで生き延びた日本海軍の名艦です。
人間も同じですが、長生きするということは、
裏を返せば多くの仲間の最期を看取ったということ。
主な艦だけでも比叡、武蔵、金剛、信濃、大和…
大戦末期に至っても、侍としての魂と誇りを忘れず、
敢闘して沈没した敵艦には敬意を表し、
闘いが終わった後は両軍共に生存者の救出に尽力する。
それは陰惨な第二次世界大戦という泥水の中で
小さく咲いた一輪の蓮の花なのかもしれません。
雪風ハ沈マズ新装版 光人社NF文庫
☆俺はどしゃぶり 須藤靖貴
主人公は駄目な高校アメフトチームの監督。
選手はでぶや優等生、主人公も太め。
そんなダメ太(混ざった)チームのひたむきな
挑戦と成長が描かれた青春真っただ中小説です。
主人公は豪快です。とにかくビールを中心に
飲めば大酒。女にはフラレまくり。
アメリカンフットボール。青春!いい響きです。
時には豪快な飲みっぷりをマネしたいものです。
いや、フラレまくりの部分だけはちょっと……
学校のチャイムの音「かん!」が印象的です。
俺はどしゃぶり 光文社文庫
☆虹よ、冒涜の虹よ 丸山健二
主人公の気鋭のやくざ「真昼の銀次」がねぐらとする
高さ100メートルの電波塔を中心に、
(精神的に)壮大な物語が上下巻で展開されます。
銀次は悪には染められているのではなく、
銀次が悪を染め上げている、とゆーのだからスゴイ。
銀次の塔こそまさに、悪の世界の中心たる金字塔。
読み終わってしまうのが惜しいと思いつつ、
ページを繰る速度を緩めることができませんでした。
もっともっと、世界の中心で悪を叫ぶ銀次の闘いを
読み続けたかった……
この「短すぎる大長編小説」というのは、虹に
通じるものがあるような気がします。
虹は壮大で美しいけれども、すぐ消えてしまう。
逆にすぐに消えてしまうからこそ、壮大で美しい。
ある意味、銀次には虹より白虹の方が似合うかも?
虹よ、冒涜の虹よ(上巻) 新潮文庫
虹よ、冒涜の虹よ(下巻) 新潮文庫
☆驟雨 吉行淳之介
性は生に通じる。
正直な話、偏差値36(?)の国語力の私では、
この小説のこころはワカリマセンでした。
単純に戦後の生活風俗、性、女を描いてあるだけ。
『喘息著名人列伝』を見たら、そういった
ものを描く中で、微妙な心理を掘り下げた、
と書いてありました(笑)。←書いたの自分だし。
肉体は確かで、精神は不確かなもの。それは事実。
だがしかし、そうであるからとて、
肉体の繋がりであるセックスは確かで、
精神の繋がりである愛情は不確かなのでしょうか?
確かめるもの、ではないかもしれませんが、
確かめるためには、まず裸にならねばなりません。
セックスをするには服を脱いで裸に。
愛情を育むには心を裸に。
驟雨のニセアカシヤのように。
そうして確かめられたもの。
それが性であり、生なのでしょう。
まぁ現実的には、何も確かめられず、
ただ快楽を貪るのみ、ってもんでしょ。
だって私も大多数の人も、淳之介じゃないんだから。
☆インストール 綿矢りさ
綿矢りさ17歳時発表の作品。
何もかも投げ出して不登校になった17歳女子高生が
12歳小学生と悪友コンビを組んで風俗チャットの
アルバイトをし、オトナの世界へ挑みます。
小さな冒険譚でもあり、
17歳の少女の成長を描いた青春小説でもあります。
早死にしない限り、誰でも17歳という時を経ます。
17歳に限定せず、青春の年代の持つ希望と閉塞感。
「怒れる若者」の図を、象徴的な現代版としたもの、
という受け取り方も可能でしょう。
軽くて短くて読み易い。でも味がある。
押入のパソコンから垣間見た大人の世界から
「落ち」た時、朝子は、読者は、
何をインストールされるでしょうか?
☆蹴りたい背中 綿矢りさ
「人間の趣味がいい」という悪趣味な女子高生が
奇妙な経緯で仲良く(?)なったのは
しょーもなく変で趣味の悪いオタク少年でした。
蹴りたくなる背中の少年に対する、陸上部の
健脚女子高生の思いは微妙なものです。
蹴るという行為は、相手にダメージを与えるもの。
しかも背中を蹴る、ということは、相手の無防備な
場所に容赦なく攻撃を加えるということ。
それでいて、蹴りが強くなればなる程比例して、
自分の足も痛くなります。
そんなこんながあっても、蹴るからには、相手と
自分の体が触れあうということ。
例によって細かいことを言えば、冒頭の文章は
多少幼いかなという感じも受けますが、
全体としてはきちんと座っていて安定している感じ。
体育座り(文中では三角座り)の文章です。
細かい比喩が巧みで、思わず吹き出したり、
へぇーと唸ったりさせられます。
綿矢りさは『インストール』に続く、これが二作目。
この作品で19歳で芥川賞を受賞しました。
確かに、高校とオタク少年のちょっと変わった家と
その周辺だけが舞台で、世界が狭いとの批判も
ありますが、言うまでもなく、文学で大切なのは
世界の広さではなく、その密度ですので。
お間違いなく。
☆蛇にピアス 金原ひとみ
↑の綿矢りさと共に20歳で第130回芥川賞を受賞。
話題になったのは「過激な性描写」があること。
作者が若い女性であり、芥川賞の対象となる
純文学作品としては、確かにドギツイかもしれません。
そんな所ばかり見るな、と言いたいですね。
ルイと金原ひとみのセックスシーンを重ね合わせる
マスターベーション根性でしょう。
まあ、そんなもんですかね。悪いとは言わないし
言えません。とにかく作品そのものに注目。
端的に言えば、今風の若者、の日常をを赤裸々に
描いたもの。その中に二つの非日常が持ち込まれます。
身体改造に熱をあげる主人公の自称「非ギャル」ルイ。
行き場、または居場所のあるいわゆる真人間には
理解しがたい衝動でしょう。
主人公がMに属することもあって、ピアス、いれずみの
細かい描写が痛く書いてあります。その描写が単調で
不十分だ、というような指摘もあるようですが、
それがかえって、痛みに慣れて、ある意味それが普通に
なってしまうMに同化させる効果を持っているようです。
自分で選んだはずの生き方、身体改造に翻弄されて
それでも自分はギャルではないと言い張るルイ。
自分を保とうという努力。それでも、なんとなく男と
セックスし、依存し、場合によっては簡単に乗り換える。
人殺しも、そんな生き方の延長、必然かもしれません。
善悪の問題ではなく、ルイが最後に抱いたように、
根拠のない自信が芽生えてくるのでしょう。
ギャルならば、根拠がなければ自信は持てないかも?
蛇にピアス 集英社
☆二十四の瞳 壺井栄
児童文学、という位置付けになるんでしょうか?
確かに、難しい言葉もないし、内容的にも難解では
ないのですが、でもやっぱり現代の子供が読むには
難しいでしょう。現代人の若者で歯ごたえがある、
くらいだと思います。
決して暗くなり過ぎぬ筆致で、島の女教師と十二人の
子供達の転変を描いていますが、無闇に声高に
主義主張やお涙頂戴話を述べている訳ではないので、
かえって深みがあり、考えさせられます。
また、物語の舞台が、小さな離島という異世界であり、
その異世界をしつこくなり過ぎずにリアルに瑞々しく
描いていることも忘れられません。しかし最大の特徴は、
昭和初期当時の小豆島ならば、こんな女教師や子供達が
いたんだろうな、と真に迫って感じられることでしょう。
夏目漱石の『坊ちゃん』が理想主義であることとは
対照的ではないでしょうか?
読者はこの作品を読んで、二十六番目の瞳にどんな
色の光を宿すことができるでしょうか?
二十四の瞳改版 新潮文庫
☆まざあ・ぐうす 北原白秋(訳)
伝承童謡としてあまりにも有名な『マザー・グース』。
子供のためのものではありますが、大人でも楽しめます。
リズム感が良いので、それだけでも文章は輝いています。
その辺は訳者の苦労と卓越した才能が垣間見えます。
原文の英語も添付されているのがまた良いです。
これもまた、英語が分からなくても押韻だけでも楽しめます。
グリム童話もそうですが、結構残酷な話も多いのですが、
ブラックジョークの愉快さはそういうものですので。
内容的には急転直下の展開でオチがコロンといく話が多いです。
童心に返って優しい気持ちを思い出せます。
ほんの微かに漂う風刺とナンセンスの香りが
子供向けの作品に深みを与え、大人を唸らせてくれます。
まざあ・ぐうす 角川文庫
☆天華無敵! ひびき遊
空を飛ぶように、爽快に、障害物も無く、一気に駆け抜けます。
それは良い意味でも悪い意味でもいえることで、この作品、
あまり高く評価しない人も多いようなのです。
確かに、主人公の天華の無敵ぶりが発揮されるということは、
障害がなくなり話の起伏がなくなってしまうということですから。
欠点が多いのは承知の上で、天華の元気のよさ白華のかわいさが
重箱の隅をつつく*欠点を全てぶっちぎってしまいました。
あと、私は基本的に挿画では判断しないのですが、今回ばかりは
桐原いづみのイラストのかわいさにやられました。
私も細かい部分をほじくるなら、携帯メールネタ、やはり秀逸です。
天華と白華の二人を結ぶ以外にも、読者に対しては時間経過を
無理なく説明できています。
1巻だけに関しては、キャラクターの顔見せ要素が大部分です。
2巻では更に壮大な冒険が描かれました。3巻以降の続刊では、
キャラクターの更なる掘り下げ、絡み、対決、内面描写に焦点が
移って行くと思われますし、そうなってほしいと期待しています。
とにかく、天華の元気さと白華のかわいさで楽しませてくれますし、
それさえあれば充分でしょう☆

☆ぼっけえ、きょうてえ 岩井志麻子
いわゆる土俗ホラー。ですからホラーは苦手という人でも読めます。
もちろん、全てが必ずしも史実通りというわけではないのでしょうが、
実際に人の営みの中で行われてきたことなのです。
ただし、語り手の遊女が客に語るという形をとることにより、
ある意味象徴的な物語へと変換されます。
「ぼっけえ、きょうてえ」という大胆にしてそのまんまのタイトルが
ここで意味を持ってきます。
遊女の語る人生は、よくある話かもしれませんが、遣りきれません。
凄惨な生い立ちの果てに借金を返し自由を得たはずの遊女には、
それでも行き場がありません。
人は誰しも、行き場の無い袋小路を持っているものですが、
遊女により最も深く細く暗い袋小路に導かれ、放り出されるのです。
客が恐怖に戦くところに救いの手(?)を差し伸べてくれるのは、
客のことを気に入った遊女の姉です。
気に入ってくれたのが、よりによって、この姉ですよ?
この悪魔のような姉が、実は妹の遊女よりも
純情可憐な乙女であり、肖像画を描くならば、甲斐庄楠音の
『横櫛』のような感じの美人画に描くのが相応しいと思えるのですが。
ぼっけえ、きょうてえ 角川ホラー文庫
☆甲賀忍法帖 山田風太郎
一言で言って荒唐無稽*奇想天外*愉快痛快*。一言じゃないが。
かなり古い時期の作品であるにもかかわらず、
現代においてもエンターテインメント性は全く色褪せ*ていません。
個人的には、登場するくノ一*が
みんな色っぽいのがいいですね(笑)。
作者は医学に造詣*が深く(っていうか医師です)、
そこに自由奔放*な想像力が
加わった時、やめられない止まらない物語が紡ぎ*出されます。
「忍者」というものは、
ただ黒装束で手裏剣*を投げるだけではない。
型にはまらない破天荒*集団であると言えます。
とにかく、読めば自分が忍者になりきって楽しめます。
甲賀忍法帖 講談社文庫
☆日蝕 平野啓一郎
作者が大学在学中に芥川賞を受賞し、
「三島由紀夫の再来」「神童*出現」と騒がれました。
文庫派の私が珍しく単行本を買って読んでみたら、
確かに三島由紀夫の再来と呼ぶに相応しい天才でした。
使われている漢字はやや難しいし、主人公の人柄ゆえに
文章も固いのですが、読みにくくはありません。
物語の内容は、自己の真の姿の探求、という純文学の王道です。
舞台は中世ヨーロッパで、両性具有者が登場するなど、
ファンタジー的要素も強いのですが、
描かれているテーマの深みゆえに現代日本を描くよりも現実的です。
人というのは、日常の中では偽りの仮面を被り、
自己の真の顔すら忘れているものですが、
超日常に遭遇した時にこそ、初めて現実が見えてくるからです。
読書というのは、そういう意味で小さな超日常体験に他なりません。
私が思うに、将来的にノーベル文学賞を受賞する可能性の最も高い
日本人作家はこの人ではないでしょうか?
日蝕 新潮文庫
☆高野聖 泉鏡花
女のような名前ですが、作者は男です。文学史の授業では
あまり名を聞きませんが、燦然*と輝きを放つ異才です。
鏡花の作品において印象深いのは、やはり
異様なまでの過激さでしょう。『外科室』で夫人が
自らの手で愛に殉ずる*場面。『海城発電』
の日本軍兵士たちが中国人の娘を陵辱*する場面。
そして『高野聖』における蛭*の場面。
下手なホラー映画よりも遥かに怖く、
本当に背筋が震えて鳥肌が立つ思いでした。
更に追い打ちをかけるように登場するのが、
山奥に住む妙に艶めかしい*女です。この女は、
女性器が艶めかしくもありグロテスクであるように、
男を虜*にします。艶めかしくグロテスクでしかも
虜にするという点では食虫花にも喩え*られるかもしれません。
はっきり言って、泉鏡花の世界は魔界です。ただ、
文章は現代の基準からするときわめて読みにくいのが難点です。
まあ、そこがいいという説もあるのでしょうが。
高野聖 集英社文庫
☆大陸の嵐 花田一三六
『大陸の嵐』という作品に限らず、「大陸」
を舞台とした一連の作品好きです。
とにかく登場人物の生き様の格好良さに酔い痴れるがよろしい。
最近のヤングアダルトは軽くて読みやすい
コメディ路線のシリーズ作品が全盛のようですが、その反面、
内容の厚みに欠けるものが多いようにも感じます。
読んだ後の充実感があっさり吹き飛んでしまうのです。
「ああ、おもしろかったな」だけで終わってしまい、
一晩寝れば忘れます。
花田一三六の作品は軽いか重いかといえば、
重い方に属するでしょう。でも改行が多く、
読み難くはありません。行数稼ぎのための闇雲の改行ではなく、
描写の必然としての改行です。
硬質でいながら大人の諧謔*の隠し味の利いた文章こそが、
「大陸」シリーズの背骨です。
小説とは、文章を以て表現するものですから、
文章が悪ければストーリーやキャラクターがいかに
優れていても、すべからく駄作です。
「大陸」シリーズは、しっかりと通った背骨から
良いダシが出ています。(←ワレながら何だこの表現?)
近年、花田一三六の本は出ていませんが、
せめて雑誌に掲載した短編を纏めた*ものくらいはせめてせめて
出して欲しいと熱望します。
珠玉の傑作を埋もれさせたくありません。
☆黎明の双星 花田一三六
↑を受けて、久しぶりに出た花田一三六の新刊3部作。
もう良い作品が書けなくなってドロップアウトしたのでは、
と心配していたのですが、余計なお世話でした。反省。
作品が悪いのではなく、出版する側があまり熱心に
出そうとしないのか……その辺の事情は知る由もありません。
この作品は大陸シリーズではなく、架空のアイルランドを
舞台としています。時代設定は19世紀後半から20世紀前半くらい。
よく、歴史は大河に喩えられます。そしてその中における人は
はかない泡沫にすぎないと喩えられます。
とにかく、その大河の壮大さを描くのが巧いのです。
小説というのは、絵画に準えるなら人物画であり、作中設定の
歴史は、文字通り背景でしかありません。
しかし花田一三六の作品は、その背景だけでも、雄壮な風景画
であるかのようです。
それでいて、泡沫であるところの人物も活き活きとしています。
悠久の大河の水面に生まれた泡沫が、大きなうねりに呑まれて
消えるまでの短い間に、太陽の光を反射して一瞬煌めく。
その煌めきの瞬間を簡潔かつ奥深い筆致で紡ぎ出しているのです。
歴史と登場人物。両者があいまって、生まれた物語。
それは既に無窮の大海かもしれません。

☆少女地獄 夢野久作
久作の作品はどういうジャンルにも分類できかねる
異作です。問題作です。異端です。
スペインの宗教裁判があったら
火あぶりの刑でウェルダンでしょう。
まずタイトルがインパクト強すぎ!『少女地獄』ですよ!?
まるで現代のアダルトビデオみたいです。
或いはポルノ小説みたいです。しかもこれが
昭和一一年(だったはず)に発表された作品なのです。
書簡*体。
これで、探偵小説なのです。
結局、主役(?)の姫草ユリ子とは何者なんでしょうか?
この姫草ユリ子って名前も、現実のAV女優の名前とかに
ありそうですね。もし実在するなら教えて下さい。
少女地獄
☆若きウェルテルの悩み ゲーテ
世界的大文豪の不朽の青春小説。
かなわぬ恋愛と知りつつ、それでも真剣に
愛し貫く主人公の姿には誰もが共感できるはずです。
ウェルテルに共感できなくなったら、その人は若さを
失ったということになると思います。書簡体でさらっと
流して書いているけど、ウェルテルはロッテへの苦しい
愛情以外に、様々な困難に苦しめられます。その風刺は、
現代にさえ完全に当てはまるものばかりで、
苦笑を禁じ得ません。ファウストよりは短いし、
テーマも身近だし読み易いのでオススメです。
若きウェルテルの悩み改版 新潮文庫
☆おしゃれ童子 太宰治
太宰作品の特徴といえば、良くも悪くも
センチメンタルであるところですが、
この作品はシンプルであり誰にでも読み易く分かり易く、
それでいて風刺も利いています。太宰の作品の中でも、
傑作の部類に入るでしょう。主人公は色々な服を着ます。
そして最後には、服に着られて、自分を
見失います。服というのは、その人本人以上に、
その人の姿を現す場合もあります。学生服、医師の白衣、軍服……
セーラー服、ナース服、メイド服、女王様ルック……
だが大事なのは中身であるのは言うまでもありません。
外側の鎧*ばかり重くなって、中身が軽くなってしまうのは
悲しいことです。……結局のところ、
潔く*鎧を脱ぎ捨てて裸になれるかどうかが問題です。
とりあえず脱げ!(笑)
いや別に男の裸なんか見たって嬉しくはないですけどね。
走れメロス(おしゃれ童子収録) 集英社文庫
☆銀河英雄伝説 田中芳樹
言わずと知れたスペースオペラの人気作品です。
田中作品の根底には全て中国史的要素があり、銀英伝もそうです。
私的には田中作品の中では、短篇集の『長江落日賦』が好きです。
銀英伝に話を戻せば、好きな登場人物は帝国のミュラーですね。
真面目だけど堅苦し過ぎもせず、面白味に欠けることもなく、
冷静であって勇猛さに欠けることもなく、帝国側の他の将軍と
比較すると、ヤン・ウェンリーに大負けを喫して*いないからです。
勿論*勝ってはいないんですけど……
この作品の投げかけているテーマは、「堕落した民主主義と
優れた独裁制」です。どちらが良いでしょうか?
優れているのは独裁の方でしょう。でも、そういう世界だと、
私のような無能な悪人は白河の清きに住みかねるので、
民主主義で我慢したいと思います。
☆王女マメーリア ロアルド・ダール
外見は醜いが心の美しい王女が、ある日突然美貌を手に入れる。
だがそれと引き替えにやがて心が汚れてきます。そして……
人間の本質を鋭くえぐっています。えぐられて快感です。
最近はプチも含めて整形が全盛のようです。
容姿が美しくなることは勿論良いことです。しかし整形美人が、
ブスだった頃の辛く悔しい気持を忘れて傲慢*になることって、
結構あるのではないでしょうか?
まあ結局のところ、心を捨ててまで外面の虚飾*にこだわるのは、
周囲の人が外見だけしか見る目が無いからに
他なりませんが。
文学の中で描かれる人間と、現実の人間との間には、
かくも大きな落差があるものなのですね。
王女マメーリア ハヤカワ・ミステリ文庫
☆坊ちゃん 夏目漱石
言わずと知れた日本文学の最高峰、不朽の名作です。
真っ直ぐな主人公は、漱石に
とっての理想の教師像。豊富な知識に基づいためくるめく日本語。
それでいて美文調に走り過ぎてはいません。
あと、漱石の独特な熟語の使い方にも注目です。
簡単というところを単簡と書いたり、勘違いというところを癇違い
と書いたり、演説というところを演舌と書いたりします。
勿論、誤字ではなく、独特の考えがあってやっていることです。
理由について深く考えてみると、十分に納得できるものです。
明治の文豪の文章ですが、読みにくくはありません。
物語の筋も分かり易く、痛快で、……
その辺は私ごときが拙い言葉を連ねて解説するまでもないでしょう。
ちなみに、この作品の中で最もいい味を出している登場人物は
下女の清だと思いますが、どうでしょう?
夏目漱石全集(2)(坊っちゃん収録) ちくま文庫
☆塀についた扉 ウエルズ
SFの元祖ともいえる『タイム・マシン』
の作者による短篇小説です。
某銀英伝のように、主人公は望みもしないのに
どんどん出世して頂点を極めます。でも、イマイチ
幸せにはなれません。ターニングポイントで
幸せに行く選択肢を捨てて掴んだ栄光だからです。
この主人公は透徹*した眼を持っています。
出世するのもある意味当然とも言えるくらいです。
何が尊い物なのか、それがどこに潜んでいるのか、
全てをきちんと見極めていました。
様々な事情でその尊い物を選べなかっただけです。
SFの元祖が、単なるエンターテインメントで小さくまとまらない、
こんな含蓄の深い作品を書いていたのだから驚きです。
ちなみに、SFの元祖があるんだから、
どこかに本家ってのがあるんでしょう。誰か教えて下さい。
タイム・マシン(塀についた扉収録) 岩波文庫
☆賢者の贈り物 O.ヘンリー
このO.ヘンリーの代表作は、言うまでもなく
『最後の一葉』ですが、
小物の使い方が巧いですね。愛する人のための贈り物って、
迷うところです。プレゼント、というのは
贈られる側にとっての意外性こそが最高のスパイスですから、
何が欲しいか聞くのも野暮です。もしも、
折角の贈り物が相手にとっての無用の物だったら?
この作品のようにそれでも相手との絆を確かめ
合ってハッピーエンドになるというのはまず難しいでしょう。
何が欲しいか聞くのが、やっぱり一番無難なようです。
贈り物といえば、入院患者へのお見舞いが困ります。
変に食べ物を持って行っても迷惑かもしれません。
花も、鉢植えはダメだとか香りが強いのはダメだとか
シクラメンは×だとか……難しいですね。
一枚の枯れかけた葉っぱの絵を描いて贈るのはどうでしょうか?(笑)
そんな物貰っても喜ぶ奴ぁいないし、邪魔になるだけかな?
あ、でも、病気や困難で苦しんでいる人に対しては
勇気を与えれるかも!香りで邪魔にはならないし、
長期入院の場合でも途中で枯れたりしませんからね。
……これって、『賢者の贈り物』の解説のはずなのに、
『最後の一葉』の蛇足解説になっちゃってますね。
オー・ヘンリー傑作選(賢者の贈り物、最後の一葉収録) 岩波文庫
☆李陵 中島敦
持病の喘息と闘い、仕事の傍ら*で地道に創作活動を続け、
幾つもの名作と、名作になるはずだった創造の種を遺し*つつ、
結局は喘息で夭逝*した小説家です。
他の作品にもいえることですが、中島敦の作品の魅力は、
まず第一に文章にあるでしょう。
豊富な言葉の知識を駆使しつつ、淡々と事実を綴って*行く。
織り成されたタペストリー全体を眺めてみると、
荒涼とした漠北の情景が蜃気楼の如く目の前に浮かび上がり、
李陵と、もう一人の主人公司馬遷の生き様と、
その中に渦巻く苦悩と執念が痛いくらいです。
勇猛であるが故に、帝国の皇帝や体制に振り回され、
結局は敵に捕らえられてしまった李陵。
捕虜となるを選ぶか潔く死を選ぶかの葛藤。
不器用だけど真っ直ぐな生き様。
そしてその李陵を弁護したゆえに、皇帝がキレて、
屈辱的な刑に処された司馬遷。
剣ではなく筆を持って司馬遷は闘い続け、
大著『史記』を完成させます。
この辺の経緯は、下手な歴史書よりも史料としての
価値があるかもしれません。
武力によって相手を撃ち破る戦い。それ以外の方法で、
李陵と司馬遷は闘い続けました。
この『李陵』という作品は、あくまでも史書ではなく、
小説です。
フィクションであり、
登場人物は作者の視点から脚色されているものであることを
忘れてはなりません。
でも、歴史上の実在人物でもある二人の存在が、
金剛石*以上に不壊*なる確固たるものとして、
読者の血肉の中に染み入ってくるような気がします。
☆山月記 中島敦
一番最初に読んだのは高校の時の国語の教科書です。
これは中島敦の最も有名な作品ですねぇ。
ただ、高校当時の私の国語力は、到底この作品を
理解できるようなレベルではありませんでした。
じゃ今なら理解できるか、と言われると苦しいのですが……
今、ふと思いました。私も「虎」だ、と。
そして世の中結構「虎」がいる。
推測ですが、中島敦自身も「虎」だったのでしょう。
私だけじゃない。中島敦だけじゃない。誰もが皆、
不安で怖いのです。自分自身を恐れ、自分以外の全てを
恐れます。誰もが「虎」に変身する遺伝子を持っているはずです。
癌*のように発症するかしないかの違いです。
世間の評価はイマイチとはいえ、自分の書く作品に
それなりの手応えを感じ、自分の中の想像の泉
の限りない深さと清浄さを確信した時、中島敦は「虎」を卒業して、
『山月記』の対極に位置する
『名人伝』という作品を作り上げることができたのです。
山月記・李陵 岩波文庫
☆カレイドスコープの少女 内藤渉
富士見の作品の中で、私が最も続編を熱望している作品がこれ。
ファンタジー的な世界観の中に投げ込まれた
機械人形という設定は大きな波紋です。
三人の機械人形とヒロインの少女がみな個性的で
魅力的です。そして、決して強くはない主人公が
様々な人との出会いの中で苦悩しつつ成長していきます。
ありがちと言えばそうなのかもしれませんが、
こういうの、私は大好きです!
内藤渉は瑞々しい恋愛物を美しく造形する達人です。
あと、ヒロインが病弱、という設定、
喘息持ちの私にとってはツボにはまっています。
必ずしもこの作品の続編でなくても良いので、
内藤渉の新作が読みたい!
昨今の作品は軽くて読み易い割には内容が薄っぺらいので、
読んだ後で何の印象も残らない作品が
多いように感じます。小手先の面白さを追求するのが
悪いとは言いませんが、そんな作品ばかりだと
飽きてしまいます。内藤渉の作品は正攻法です。
相撲に喩えるなら横綱貴乃花のような感じです。
読後感が抜群です。心の中から暖かいものが
とめどなく溢れ出てくる感じです。
☆変身 カフカ
その名の通り変身譚*です。
『山月記』と違うのは、『山月記』では
主人公の李徴も読者も、何故虎に変身したのか、
何となく分かります。
しかし『変身』では、主人公のグレゴール・ザムザが
何故毒虫に変身したのか分かりません。理不尽です。
カフカの作品でも『城』なんかは長くて、最後まで
読むのは根性がいりますが、『変身』ならば一気に
読める長さです。
結局変身譚全般にいえることですが、
毒虫というのは主人公の真の姿なのです。変身してからの顛末*は、
哀れというより寧ろ*滑稽*でさえあります。
毒虫という真の姿へ変身したのに理不尽。一見おかしいように
感じますが、カフカの世界の基本法則が理不尽であることを
忘れてはなりません。変身後の主人公は周囲から
理不尽な扱いを受けて苦しみます。が、実際には、
変身前から形は違えど理不尽に悩まされていたのでは
ないでしょうか。何故、ザムザが変身したのが毒虫なのか?
私なら、カラスかオオカミを選びますね。
え? 選択の余地があるのかって?
そりゃ無いんでしょうけど、ザムザは毒虫を選んだのです。
ん? 私の場合は選ぶまでもなく今でも充分オオカミだって?
そういうこと言う人は食べちゃいますよ?
変身・断食芸人改版 岩波文庫
☆後宮小説 酒見賢一
この人天才だな。
……私に言わせればみんな天才になってしまうような気がします。
まぁ、私のような凡才とは比較にならぬ程高いレベルである
という訳で、地上の人間には、雲の上に突き出た山の
頂の高さの差など推し量る*術*も無いのです。
ええと確かこの作品の売り文句は、
「シンデレラ」+「ラストエンペラー」+「金瓶梅」+「三国志」
の面白さと
ヴォルテールの思想性と
中島敦の文章の格調
を併せ持った驚異の作品、ということで……
思想性は私にはようワカランが、他はその通りです。
中国史に詳しくない人でも楽しく読めます。私が読めました。
難しいことは抜きにして、主人公の銀河の破天荒さと、
同室の三人の個性的な仲間の活躍を楽しめれば、
それで十分です。あと、「たると」の設定は会心の一撃です。
後宮小説 新潮文庫
今後も、新たに本を読むか、思い出すたびに増やしていきます。
多くなってきたら、ヤングアダルトについては
別途コンテンツを設けて分離独立させる予定です。
★滲み:にじみ。
★真摯:しんし。まじめ、真剣。
★蛇足:だそく。蛇にとっての足のように、よけいなもの。
★重箱の隅をつつく:じゅうばこのすみをつつく。わざわざ細かい欠点をさがす。
★荒唐無稽:こうとうむけい。でたらめ。むちゃくちゃ。
★奇想天外:きそうてんがい。想像もつかないほど意外なこと。
★愉快痛快:ゆかいつうかい。おもしろく楽しいこと。
★色褪せ:いろあせ。
★くノ一:くのいち。女忍者のこと。
★造詣:ぞうけい。その分野に通じている、熟練している。
★自由奔放:じゆうほんぽう。何にもしばられず自由であること。
★紡ぎ:つむぎ。
★手裏剣:しゅりけん。忍者の代表的な武器。
★破天荒:はてんこう。前例の無いようなこと。
★神童:しんどう。若き天才。
★燦然:さんぜん。まぶしく輝くさま。
★殉ずる:じゅんずる。価値あるもののために命を投げ出して尽くす。
★陵辱:りょうじょく。力ずくで犯す。
★蛭:ひる。血を吸う生き物。
★艶めかしい:なまめかしい。
★虜:とりこ。つかまる。
★喩え:たとえ。
★諧謔:かいぎゃく。面白味のある冗談。
★纏めた:まとめた。
★書簡:しょかん。手紙。
★鎧:よろい。防御するために体に装着する。
★潔く:いさぎよく。気持ちよく。妙な未練を残さず。
★喫して:きっして。
★勿論:もちろん。
★傲慢:ごうまん。おごり高ぶって人を見下すこと。
★虚飾:きょしょく。実質のともなわないただの飾り。
★透徹:とうてつ。透き通っている。無駄が無く出来上がっている。
★傍ら:かたわら。横。側。
★遺し:のこし。
★夭逝:ようせい。若くして死ぬこと。
★綴って:つづって。
★金剛石:こんごうせき。ダイヤモンド。硬くて壊れない石。
★不壊:ふえ。壊れないこと。
★癌:がん。不治の病の代名詞。
★譚:たん。はなし。
★顛末:てんまつ。事の始めから終わりまでのなりゆき。
★寧ろ:むしろ。それよりも。
★滑稽:こっけい。ばかばかしく、おもしろおかしい。
★推し量る:おしはかる。推測する。
★術:すべ。方法、手段。
★韻文:いんぶん。普通の文章の散文(さんぶん)に対して、詩などの音声上の形式を持った文章。
雑草ヶ原
へ戻る。