草庵工房
戦士たちよ白夜に歌え 原稿用紙350枚分。2004年9月24日上梓。北欧神話風異世界ファンタジー(?)。
第一章 白夜の夕べ
第二章 狂戦士未だ眠らず
第三章 侏儒
第四章 憎悪の運び手の罠
第五章 白の色模様
第六章 真夏の白夜の夢
第七章 大雪原遥か
第八章 少女と大人
第九章 戦士の休息
第一〇章 縺れ合った糸を切って
第一一章 象徴
第一二章 秘処
第一三章 天空の戦乙女
第一四章 僕たちの未来へ
安全度外視。
ところで、大抵の人は
「亜麻色の髪の乙女」
と言えば何を思い出すでしょうか?
ヴィレッジシンガーズの歌でしょうか。
それをカヴァーした島谷ひとみ様も鮮烈でした。
逆の意味で鮮烈だったのがヴィレッジシンガーズ
……の偽物! ですね。
この「亜麻色の髪の乙女」という歌は、フランスの
作曲家ドビュッシー(1862〜1918)のピアノ曲
「亜麻色の髪の乙女」にインスピレーションを受けて
作られた詞ではないかと想像されます(あくまで想像)。
ではそのドビュッシーはというと、フランスの高踏派の
詩人ルコント・ド・リール(1818〜1894)の
「古代詩集:スコットランドの歌」の中の『亜麻色の髪の乙女』
という詩に霊感を得て(れいかんをえて。ひらめいて)、
同名のピアノ前奏曲を作りました。
つまり、ルコント・ド・リールの詩こそが、
『亜麻色の髪の乙女』の原点、真の姿だったのです。
島谷ひとみ
ルーツが分かれば、その詩を読んでみたくなるってもんです。
この時点で私は『亜麻色の髪の乙女』に惚れ込んでしまったと
言えるでしょう。とりあえず本屋の詩集コーナーへ行きました。
しかし見つかりません。かの有名な上田敏博士が訳詩集
『海潮音』の中でルコント・ド・リールの詩を
「彫塑(ちょうそ。彫刻の原型)の形を具え(そなえ。有している)
ている」と評し、三篇を収録しています(『真昼』『大飢餓』『象』)。
だけど肝心の『亜麻色の髪の乙女』はありません。インターネットで
『la fille aux cheveux de lin』で検索してみると……
フランスの詩の検索サイトでついに恋いこがれた
『la fille aux cheveux de lin』に邂逅(かいこう。出会う)しました。
しかし! 彼女が私に語り掛ける言葉はフランス語です。
翻訳ソフトも、英語ならば、無機質で瑞々しさ(みずみずしさ。うるおい)
の無い日本語に
訳してくれますが、仏語は対象外のようです。
結局、仏和辞典片手に自力で翻訳することになりました。
という訳で……
『亜麻色の髪の乙女』の日本語訳を初公開!
多分どこかには和訳の書籍や論文が既に存在する
のでしょう。ネット上にも訳があるかもしれません。
でもまあ、とにかく自分独自の翻訳を世に問うことが
できたことに意義があるのではないでしょうか。
言うまでもないことですが、この『亜麻色の髪の乙女』の日本語訳の
著作権は、私、皇帝コロナトゥス0世にあります。無断使用禁止です。
私はフランス語の専門家ではなく、単に趣味で辞書を片手に片言訳を
試みただけです。誤訳等があったとしても一切責任を負いません。
私としても、より正しくより良い訳にさせたいと思っていますので
誤訳の指摘、より適切な表現の提案がございましたら、どうぞ
ご遠慮なくご指導下さい。訂正する労力を惜しむものではありません。
私の素人ヘッポコ訳でも良いから、どうしても引用して使いたい
という人がいましたら、とりあえず相談してみて下さい。
(まず使いたいなんて人はいないとは思いますが……)
そこら辺をご理解いただいた上で、こちらのボタンからお入り下さい。
↓
ルコント・ド・リールは何故この詩を作ったのでしょう?スコットランドを
旅した時にでも、実際に亜麻色の髪の乙女に出会ったのでしょうか?
誰かの小説か絵画か何かに着想を得たなんて話はないですよね?
そういった情報についてもお寄せいただければ幸いです。
訳詩の背景色は「亜麻色」に設定しました。
三属性のマンセル値では、色相10YR、明度8、彩度2です。
オフセット印刷における網点パーセント(目安)では、
CYAN14、MAGENTA28、YELLOW37、BLACK0です。
ここではRGB値で#CCCC99としました。
実際に色を出してみると「こんな色だったっけ!?」違和感炸裂です。
画面上で見るのと印刷した色を見るのとでは違うかもしれませんが……
色の事典で見てみると、もっとなんか茶色っぽい感じの色です。説明には
「明るい灰黄」とあります。
どちらにしても、実はあまりきれいな色じゃないですよね!?
それにしても、たっったの24行(実質18行)ぽっちの短い詩を
訳すのに一週間もかかった私って……翻訳業の人は偉大だと実感。
本業の翻訳家には絶対的な実力では及ばないにしても、自分と
しては可能な限り細かい部分にまでこだわり訳したつもりです。
基本はやはり原文になるべく忠実に。でも日本語訳であるからには
しっかりと日本語の詩としても味わうに耐える形になるように。
以下では、
詳細部分の解説を、註釈として記していきます。
「この部分について、何故こう訳したのか」という根拠を示せば、
誤りがある場合に正し易いからです。詩を全24行とし、
行ごとに註釈をつけます。
原文については、著作権に触れるので全文の掲載は
できませんが、リンクの項から参照して下さい。
今後、誤訳やより良い表現が発見された時は、訳詩本篇のみならず
下記の註釈も修正しますので、更新情報にご注目下さい。èé
100曲クラシック(ドビュッシー 亜麻色の髪の乙女 収録)
註釈
1行目:
★繚乱:りょうらん。咲き乱れること。
★Surを訳すに際し、原文には無い「野」を挿入しています。
そうしないと日本語として繋がり(つながり)が悪いので。
★luzerneは仏和辞典では紫色の花を咲かせる苜蓿、とありました。
苜蓿は「ウマゴヤシ」です。ウマゴヤシを調べてみると、黄色い花を
咲かせるとか、白詰草の別称であるとか、様々な説明があります。
詩の季節は夏なので、春の花である白詰草は明らかに不適当です。
辞典に載っている程ですから仏語でいうところの苜蓿は紫色の花を
咲かせるものなのでしょう。そこで、違いをはっきりさせるため、
紫苜蓿としました。わざわざ難しい漢字を使ったのは、カタカナだと
一行が少々長めになるためと、どうも「ウマゴヤシ」という字面は
あまり格好が良いとは言えないためです。
ムラサキウマゴヤシ(学名:Medicago sativa L.)
科名:マメ科
花期:5月〜9月
生育地:牧草地
草丈:30〜90cm
別名:アルファルファ(この名の方が有名?)、ルーサン
メモ:地中海地方が原産の多年草。野生化したものが多くあります。
明治のはじめに渡来し、よい牧草として現在も広く栽培されています。
他の牧草の4〜10倍の飼育力を持つそうです。花はその名の通り、
淡紫、または紫色をしています。
★assiseは形容詞としては座っている、基盤が安定している、の意。
名詞では基盤、水平に敷き詰められた煉瓦(れんが)の列、等の意味があり、
ここではどちらなのか分かりません(恥)。仏語の文法なんて
覚えていません。紫苜蓿という植物の特性と、一本の草から幾つもの
密集した花が咲いている様子を見ると、煉瓦列、に心惹かれました。
ただ、花が咲いている、とはせず、繚乱、という表現を選んだ意図を
酌んで(くんで)いただけるでしょうか。
2行目:
★清々しい:すがすがしい。
★朝まだき:早朝。
3行目:
★filleは娘、少女。乙女の意も無いとはいえないが、多少文語的表現
ではあります。しかしla fille aux cheveux de linといえば、慣例的に
「亜麻色の髪の乙女」です。ここでは慣例に素直に従っています。
★linは亜麻。亜麻色については上記の私の戯言を参照。
アマ(学名:Linum usitatissimum)
科名:アマ科
花期:6〜7月
生育地:道端、道路の法面
草丈:50〜100cm
その他:栽培植物、薬用効能有
メモ:中央アジアからサウジアラビア北部が原産の一年草。日本渡来
は元禄時代。明治初期に北海道開拓使が織物の原料として繊維を
採ることと種子から亜麻仁油を採るために栽培を始めたそうです。
現在は 園芸用にもなっています。ブルー、または白の5弁の花が
咲きます。亜麻色、というのは亜麻糸の色から来ています。結構
可憐で綺麗な色の花を咲かせているのに、人間にとって役に立つ
亜麻糸の材料としてしか見られていなかった訳です。雑草の見本。
4行目:
★lèvresは唇。当然複数形です。7行目に、boucheという語が出ます。
直訳すると、口、であり、唇の意もありますが、区別するために、
lèvresを唇、boucheを口唇としました。
★ceriseはさくらんぼ色の意。とにかく、詩の中において、
乙女の髪よりもむしろ唇に異様に執着(しゅうちゃく。こだわる)しています。
薔薇色と表現したり呉藍色と表現したり……
5行目:
★auは、〜へ、〜に、対して、属する、〜のある、〜を持つ、すべき、
〜のような、などの意味。5行目と6行目は、「太陽の下で、乙女が
雲雀と一緒に歌った」のか「歌う揚雲雀(あげひばり。
空にまいあがるヒバリ)を、乙女が目線で追い、太陽
を見上げた」のか、「太陽のような乙女が雲雀と一緒に歌った」のか、
或いは他の訳が可能なのか悩みました。結果、例によって玉虫色の
曖昧な訳をつけました。太陽を仰いで雲雀と一緒に歌った、です。
仰いで、ではあまりにも直接的に見上げているというイメージが
読者に伝わり過ぎてしまうので、振り放き(ふりさき。上をあおぐ)、
とお茶を濁しました。
7行目:
★boucheは4行目のlèvresの解説の項で示した通り、口唇。
★couleursは色の複数形。唇の色は単色ではなく、光の当たる角度や
艶(つや)の加減により違って見えるという意味と解釈できます。実際に、
さくらんぼ色、薔薇色、呉藍色という表現があります。よってcouleurs
は色とはせず、複数的要素を含む彩り(いろどり)としました。
★divinesは素晴らしい、美しい、神の、などといった意味。本来神
(dieu)に由来している語なので、神々しい、が適切と判断。
9行目:
★1行目と同じ理由で訳に咲いたを挿入。
10行目:
★睫毛:まつげ。
★bouclesは辞書に載ってるそのまんま「巻き毛」。スコットランドの
亜麻色の髪の乙女は、島谷ひとみ様のようなストレートヘアではない
ようですね。
14行目:
★entendrai聞くの未来形。聞くの他に理解する、欲するなどの意味が
あり、ここでは望むの意……と仮訳しました。14行目から16行目
までは最も訳に自信の無い部分です。ご指導をお願いします。直前の
「はいと言わないで」というのも謎めいていて、以降の3行の訳を困難
にしている伏線です。
15行目:
★regardは視線、凝視(ぎょうし)。どう考えても名詞です。動詞だったら楽だった
のですが……Le long regardで、長い間凝視していたい、という意味
か?ただ、前のentendraiの文からの繋がりがぎこちないんですね。
また、後ろの、「君の大きな瞳」との繋がりも微妙です。
16行目:
★Et以降の「君の薔薇色の唇」が、どこにかかるかも謎。「君の大きな
瞳」との対句というのが最も有力な考えですが。15行目全てを一続き
の句と考え、「君の薔薇色の唇」はentendraiにかかるという可能性も
捨て切れません。なにせentendraiの訳が確定できていないので……
19行目:
★lièvresは野兎(のうさぎ)と辞書にあります。普通の兎はlapinなので、
ここでは野兎が妥当。
20行目:
★山鶉:やまうずら。
21行目:
★21行目と22行目は対句。亜麻色の髪に口づけ、としたい
ところだが、原文の単語の順番に忠実に、髪の亜麻色に口づけ、と
翻訳。日本語としては少し据わり(すわり)が良いとは言えないような気が……
22行目:
★Presser押す。Presserは意味はBaiserとほぼ同じ、口づけする、
だが、より強い意味の奪うとしました。
★pourpreは緋色(ひいろ)、真っ赤等の意味だが、どう見ても英語のパープル
即ち紫です。仏語で紫はviolet、つまり菫(すみれ)色と表記します。これは
唇の色の描写なので、紫はないでしょう。それではチアノーゼです。
だが欲張りな私としては紫のニュアンスもどうしても入れたいのです。
普通に赤とは訳せません。山鶉の色のrougeがあるので。
色の事典で調べても、緋色も真っ赤もピンときません。紅(くれない)
色が、紫の要素が混じっていて、それでいて唇の色としても変では
ないと思われましたが、紅色だと「べにいろ」と読まれてしましそう
なので呉藍色(くれないいろ)と難しい表記にしました。藍が入って
いるので、紫のニュアンスを少しでも残せるという意味もあります。
↓亜麻、亜麻色についての記事はこちらを主に参考として書きました。
「亜麻色アヴァンチュール」様
ジュネス仏和辞典(革装)
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